「外に行ってた奴がおもしろいもんを拾ってきたぞ。」 「おもしろい物?」 「あぁ。おんしも見てみぃ、ほれ。」 「・・・何だ、これは?世の為、人の為の鬼退治?」 「どうじゃ、おもしろいじゃろ。ご丁寧に退治しに来る奴の似顔絵つきじゃ。」 「ふん、世の中変わってる奴が多いみたいだな。」 「そうかも、しれんなぁ。」 「それで、どうするんだ?鬼ってお前らの事みたいだが。」 「お前らって、ここにおる以上、おんしも鬼じゃろうが。」 「・・・かもな、あの満月の夜から外では人を害せずに生きられない体になった。まさに、鬼、だよな。」 「すまん、そう言うつもりで言ったんじゃなかったがや。」 「べつにいいさ、事実だ。それで、本当にここまでこいつらが来たらどうするんだ?」 「そんなのはどうとでもなる。わしらの方が人数もまさっちょるしな。 まぁ、退屈しのぎにはちょうどじゃろ。」 そんな会話が直江達の目的地でかわされていた頃、 四人に増えた鬼の退治集団は自己紹介もすんで、再び旅路についておりました。 犬だった譲、猿だった千秋、きじだった綾子、そして桃から産まれた直江。 それぞれが、それぞれの思惑を胸に旅は進んでいくのです。 そんな目的地まであと幾ばくもない、ある日の事、千秋が妙な事に気がつきました。 「なぁ、どうも見られてるような気がしねーか?」 千秋のそんな言葉に真っ先に反応したのは綾子です。 「何言ってんの。そういうのってなんて言うか知ってる?自・意・識・過・剰!」 「何だとぉ!俺はそんなんで言ったんじゃねー。 この町に入ってからこっち、俺たち全員が変に注目されてるって言ってんだ!」 「だから、それが・・・」 「二人とも、余計注目されるからやめろ。」 この二人が仲間に入ってからはすでに日常になりつつある口論を頭痛と共に押さえ込んで、 直江は千秋の方を向き直ります。 「それよりも千秋、注目を浴びてるって言うのはさっきから私も気になってたんだ。 何か、変だな・・・」 「そうだろ?俺様がいるから色気のある視線なら分かるんだが、これはそう言う類のもんじゃねーよな。」 前半の図々しい千秋の言葉を無視して、直江も頷きます。 「違うだろうな、そんないいもんじゃない。 どちらかというと、・・物珍しいものを見るような、そんな視線だ。」 直江に千秋、綾子の三人で話し合ってみても、さっぱり理由が分かりません。 首をかしげていると、譲に、 「ねぇ、あれなんだろう?」 と、不思議そうに尋ねられて、 話が行き詰まってしまっていた三人は、何とはなしに譲が指差す方を見て、驚きました。 カラスの集団が、何か紙切れを空からばら撒いているのです。 「なんだぁ、あいつら?」 千秋がすっとんきょんな声を上げましたが、それに答えられるものはいません。 ただ、皆が不思議そうに空を見上げている中、直江だけは渋い顔をしています。 「・・・譲さん、あのカラスと話できますか?」 「あっ、そうか、カラスさんに直接聞いてみればよかったんだぁ。」 今、思い出したというように、譲は一人頷いてから両手でメガホンを作り、空に向かって声を掛け始めました。 「おーい、カラスさーん、ちょっと降りてきてほしいんだけどぉ!!」 空いっぱいに響く譲の声に反応して、一番近くを飛んでいたカラスが 頭上で二、三回円を描いてから降りてきます。 やはり、譲には高坂ばあさんのカラスでさえも逆らえない不思議な力でもあるようです。 笑顔で譲がお礼を言うと、照れたようにカラスは一鳴き。 「あのね、さっきから忙しそうに何を配っているのか見せてほしんだけど、ダメ?」 首をかしげながら聞かれて、カラスは少し困ったように鳴いてから、空高く舞い上がりました。 そして仲間から一枚貰って、譲の上にヒラヒラと落としてくれます。 「ありがとぉー!!」 落としてくれたカラスに手を振りながらお礼を言ってから譲は、落ちてきた紙に手をのばします。 「え〜っと・・・」 裏を向いていたその紙をひっくり返して、皆で一緒にそれに目を通します。 そして、まず目に飛び込んできたのが、どっかで見たことのある顔・・・ 「・・・ねぇ、これって直江よね?」 「俺サマもそう思う・・・」 綾子と千秋が交互にうなずいて、直江のほうを向くと、直江は額を押さえ込んでため息をついています。 どうやら、本人に間違いないようです。 「やはり、このままではすまなかったか・・・」 苦虫を噛み潰したように呟く直江に、千秋と綾子は同情の目を向けます。 その前で譲は声を上げて、その紙を読み始めました。 「えっとぉ・・・ 『カラスタイムズ第五号 〜直江太郎(改め直江)出陣から13日〜 およそ二日ごとに配られていって、はや五号。 季節も移り変わってきた中、皆さんいかがお過ごしでしょうか? 直江太郎のほうは皆さんのご協力のおかげで、島まで後三日というところまでやって来れました。 (*なお、顔は下図参照のこと) ふがない息子に代わって私どもがお礼を申し上げたい次第でございます。 昨日、おとついの直江太郎の行動ですが、三本木のあたりでこけかけた以外は 特に何事もなかったようです。 これも、皆さんのおかげでしょう。 さてさて、前々号で紹介いたしました、直江太郎の新しい仲間である千秋さんに綾子さんも ようやっと旅になれてきたようです。 なので、それを記念して、次号では直江太郎とその仲間達のプロフィールを 似顔絵入りで、お見せする予定です。 皆さん、お楽しみに!! ――広告―― さて、皆様、この直江太郎、“世界一”の旗こそ掲げていませんが、 ご存知の通り、あの鬼を退治できると判を押された人物です。 これもすべて育ての親の教育の賜物なのを皆さんご存知でしょうか? こんな素敵な教育法を知りたくはありませんか? ただ今武田塾では新規の生徒を募集中です!! 皆で素敵な子供を育てませんか? 一度、遊びにいらしてください。 (なお、月謝は相談の事) 高坂出版 』 へぇ、高坂さん塾も開いてたんだぁ。すごいなぁ」 譲が感心したようにそう呟くと、それまで言葉という存在すら忘れてしまったかのように黙っていた綾子と千秋は ようやっと我に返って、 「譲、それは感想を述べるところが違うと思うぞ・・・」 と、千秋がため息と共に言います。 すると、それに賛同するように 「そうよ、譲君。そこはどうでもいいのよ。」 と、綾子。 言い終わって、今の内容を頭の中で反芻していたら余計怒りが高まってきたのでしょうか? 暫くすると綾子は拳をにぎって、 「問題はそんなところじゃなくて、前半!!その直江の似顔絵の上のところなのよ! 何?何でここまで近況がばれてるわけ? しかも、しかも次回は私達の似顔絵まで載るですってぇ!!」 と、声を押さえることも出来ずに叫びました。 それに答えるのはいまいましげに舌を打った千秋です。 「・・・カラスはどこにでもいるからな。 何もしてこないと思っていたら、俺たちの預かり知らぬところでずっと、こんなもん配ってたわけだ。」 直江に聞いた時から多少の妨害は覚悟していた千秋ですが、まさかこんな形だとは思ってもいませんでした。 「それに、こんなのに顔載せられたら最後。二度とここらじゃ暮らせねーぞ・・・」 千秋の心配する内容は微妙にずれていると思った綾子ですが、文句を言いたい気持ちは同じです。 自然、すがるように直江を見上げ、 「直江、どうにかならないわけぇ?」 と、言います。 しかし、そんな事を言われても返す言葉はなく、 「もしあるのなら、この旅に出る前に実行している。」 と、力なく至極当たり前のことをため息と共に吐き出すのみ。 その通りだと、千秋と綾子は一緒になってため息をつき、それを不思議そうに譲は見つめます。 とにかく、あと少し、四人の珍道中は続くようです。はい、第四幕です。どうだったでしょう??
鬼たちも会話のみで初参加です。
さてさて、今日はここで皆さんにお知らせです。
実は先日、BBSにおもしろいカキコがありましてそれをここで発表したいと思います♪
内容はずばり、この話のサブタイトル(笑)
二通りありまして、
「ザ!・直江受難の日々」 と、
「直江VSその他オールキャスト! 直江に幸せは来るのか!?(←結果は明白(笑)」 。
笑わしてもらいました!!
本当に楽しいカキコありがとうございます、荏夏さん!!
ぜひとも、サブタイトルにさせていただきます!!
それで、どちらにしようかはまだ悩み中です。
どっちがいいでしょうねぇ(笑)
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