「綺麗だな」

とっくに終園時間を過ぎた深夜の水族館で、ポツリと高耶が呟く。

「そうですね」

自分たち以外の人の気配がない闇の中で、大きな水槽だけが蒼い光を発していた。その中を自由に泳ぎまわる魚たち。

「まるで、深海に来たみたいだ」

「だとしたら、私たちは深海魚ですか?」

胸に体を預ける高耶の髪を梳く。

「かもな」

優しく触る掌と指先に気持ち良さそうに目を細めて、答えた。

「光もささないような海の奥深くでも、お前がいればいい。光の夢を見ながら、お前の胸で眠れれば」

「照り付けるような日光の下でも、優しく降り注ぐ月光の下でも、光のささない海の最果てでも。私もあなたとともにいます」

触れるだけの優しい口付け。

「直江、もっと・・・もっと、キスして・・・・・・」

ある夏の夜の、人気のない深夜の水族館での、密会。



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