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高耶さん’s BD小説



チッ
チッ
チッ

・・・・・・

ポーン、ポーン、ポーン ・・・・・・・・・


「おめでとうございます」

「・・・おう、ありがとう」

7月23日深夜0:00
生まれたばかりの今日という日を祝って恋人達は
カツンっと澄んだ音でグラスを鳴らす。

部屋を燈すのは、キャンドルの火のみ。

薄暗いの部屋の中で、炎が幻想的に揺れていた。


舌にわずかに残るほろ苦いワインは、喉に届くとわずかに辛く、若木のはぜるような香りが立つ。

「おいしい・・・」

思わず呟かれた言葉に男は艶やかに笑んで見せる。

「あなたの生まれた年に作られたものなんですよ」

「オレの生まれた年に?」

「えぇ。
今日飲むのにこれ以上ぴったりなものはないでしょう?」

キャンドル越しの男の顔は、白熱灯の元のそれよりも色気があり、どこか野生めいていて。

そんな男に目を奪われ、頬が紅潮するのを感じる。

「少しだけグラスを揺らして、それからもう一度飲んでみて下さい」

言われるままにグラスを揺らし、ゆっくりとグラスに口をつける。

「えっ・・・さっきと味が違う」

見た目は何も変わっていないのに、先ほど感じた苦さがすっかり姿を消して、よりまろやかで、深みのある味へと変わっている。

まるで、男の言葉に魔法を掛けられたかのようだ。

もう一口。

口に含んでみると、どこか甘い芳香がぱぁっと口中に広がった。

グラスを空けながら、体を包んでいくかのようなワインに、身を委ねるようにゆったりと目を閉じる。

男がそれを、満足げな深い笑みで見守る。

「まるで」

男の声が部屋にたゆたう。

「あなたのようでしょう?」

情事を連想させるような男の声に酒の酔いが混じり、体が熱をはらんでいく。

それをあおるように、男は言葉を続ける。

「頑なだったあなたが、俺の腕の中で少しづつほころんでいく・・・」

規則的に揺れていたキャンドルの炎がふいに乱れる。

男の手がゆっくりと伸ばされ、意味深に頬に、耳朶に、顎に、そして唇に触れていく。

「愛してる・・・・・・」

紡がれた言葉に小さく頷いて、そっと瞳を閉じる。

キャンドル越しの口付け。

二人の間に濡れた吐息が零れ落ちる。


「愛してます」


あなたの生まれたこの聖夜に祈るように。




Happy Birthday



end


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