「オレを、捕まえるのか?」

月の光を背に不敵に笑った高耶に、直江は苦々しく顔を歪ませた。

「捕まえられるわけがないと、分かっているんでしょう?」

罪人を捕らえるのが仕事のはずの自分の目の前で、“殺人”という罪を犯されたのに、それを証明できるものは一切ない。
まさか、己の記憶が証拠だといって取り出すわけにもいかない。そんなことをしたところで、高耶が否定すれば釈放され、自分は妄想癖があると言うレッテルが貼られるだけだろう。

それに、例え証拠があったとしても
「俺があなたを刑務所になんて送れると思いますか」
「まさか」

やはり苦い直江の言葉に高耶は即座に答えた。
高耶の声はいっそ楽しげに、空気を揺らす。

「捕まえたら、オレに会えなくなるもんな?」

直江が自分に対して抱いている想いなど、全て見通しているに違いない絶対的なその声は、どこか甘く男の耳朶をくすぐる。

「それじゃぁ、お前、干乾びちまうもんなぁ」

毒をはらんだその言葉に、直江は諦めたように天を仰いだ。
月の光が冷ややかに夜の闇を照らしている。

高耶の、言うとおりだった。
彼が捕まり、もし今までの罪状が明かになれば、死刑判決が出るのは確実で。現状では実際に十三階段を登ることにならないとしても、一生檻の中から出てくることは出来ないだろう。
そんな状況を赦せるはずもなく、耐えられようはずもない。

「えぇ、あなたがいない世界なんて、考えることも出来ない」

例えそれが、法律的にも、倫理的にも許されることではなく、さらに、自分に果てのない苦しみを与えることだとしても。

「あなたに触れられなければ、俺は・・・・・・」

言い様、直江は高耶の腕を引き、自分のほうへと引き寄せた。
ふわりと香る硝煙。
高耶は直江の手に抗うことなく男の胸へと躯を預け、喉の奥で小さく笑った。
その笑いを聞きたくなくて、直江は高耶の唇を己の唇で塞ぐ。

背徳の口付けは、ひどく、甘かった。


ーfinー


何をとち狂ったのか、
たまにはこんなお話です。
ちなみに続きません。
あくまで場面小説。
こんなのも楽しいのよ〜と、
るんたかるんたか、書いてみました。
実はmade in Singaporeです。
夜中に書いて、共にいた某お方にお見せしたら、
「子悪魔じゃなくて、悪魔な高耶さんね」
と、感想をいただきました。
えぇ!!悪魔な高耶さんです!!
もしよろしければ、感想をば。。。


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