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Telephone(後編) 
部屋から飛び出して、慌てて靴をはいていると、不思議顔の美弥が台所から出てきた。 靴を履いているオレを見ると、途端に元気がなくなったように表情が曇ってしまう。 「おにいちゃん?どこか行くの?・・・もうご飯できるよ」 不満そうに言う美弥に、 「すぐ戻るっ!」 そういって、玄関を飛び出した。 アパートの前に置いてある、見なれたダークグリーンの車。 その車に寄りかかるようにして、ずっと焦がれつづけていた男が待っている。 転げ落ちるように階段を駆け下りてきたオレを、実に楽しそうに眺めながら、直江は 携帯をポケットにしまい込んだ。 「こ・・・のっ!騙したなっ!」 妙に嬉しそうに見つめてくる男を、鋭く睨み上げながら、怒鳴りつけた。 しかし、男は涼しい顔で、いけしゃあしゃあとこんなことを言ってきたのだ。 「騙したなんて人聞きの悪い。言わなかっただけです」 「来てるなら来てるって、早く言えっ!ばかっ!」 「あなたの驚いた顔が見たかったんですよ」 ―――― 子供か?おまえは・・・。 思わず、呆れて脱力してしまう。 そんな理由で、オレをこんなにドキドキさせたのかよっ。 「ようやく、会えましたね」 「おまえがもっと早くに言ってたら、もっと早くに会えたんだぞ」 ―――― すいません。と、くすくす笑いながら、不貞腐れて唇を尖らせるオレの髪 を、長い指で優しく梳いた。 反省の色もない態度にムッとしたが、せっかく会えたというのに、これ以上言い争う のも馬鹿馬鹿しい気がしてくる。 口から出そうになる文句を飲み込んで、ひさしぶりの、この感触を感じるべく、オレ は瞼を閉じて受け入れた。 ふと、目の前が暗くなる。 ―――― キスされる・・・。 瞳を閉じたまま、思わず、身構えたオレの頭上で、 「あれ?直江さんだ。こんばんはー!」 元気な声に、パカッと目を開けた。 そのまま、全身が硬直してしまう。 ベランダから、菜箸を持った美弥が声をかけてきたのだ。 直江は、何事もなかったかのように、美弥に挨拶している。 キスされる、と、思ったのはただの勘違いだったのだろうか? 顔から火が出るくらい、恥ずかしい。 ―――― 思わず身構えちゃったりして、オレ、とんでもなく欲求不満なのだろうか? 美弥に背を向けている格好でよかった。 こんな顔、とてもじゃないけと、美弥に見せられない。 「おにいちゃん。ご飯できたよ、上がってきて!直江さんも一緒に!美弥の自信作なんだ」 美弥は無邪気にオレ達を呼んだ。 「今、行くよ」 絶対赤くなっているだろう顔を隠して 直江も来いよ。と、直江の返事を待たないまま、直江に背を向ける。 背中に暖かな視線を感じながら、アパートの階段をのぼったのだった。 「ねぇねぇ、どう?おにいちゃん?」 『おにいちゃんにも負けない肉じゃが』をオレに進めて、嬉しそうに返事を待っている。 自信作と胸を張るだけあって、高耶が作るものとは、また違った味で、おいしい。 「まぁまぁだな」 「も〜、おにいちゃんってば、素直に『おいしい』って言ってよぅ。ね、ね?直江さんは? どうかなぁ?」 「とてもおいしいですよ、美弥さん。甘すぎもしょっぱすぎもせず、ダシの味で全体がよく 整っている」 料亭よりも、ずっと品がよくておいしいですよ。と、微笑む直江に、美弥はえへへと嬉し そうにはにかんだ。 「おにいちゃんも、たまにはそういってくれればいいのに〜」 美弥が拗ねたように唇を尖らせる。 ・・・どうやら、この兄妹は、拗ねると唇を尖らせることが癖らしい。 高耶と同じ、美弥の癖に、直江は瞳を和らげて微笑んだ。 「高耶さんの『まぁまぁ』は、『最高』って意味ですよ。美弥さん」 「・・・そっか。そういえばそうかも。バイクとか好きな癖に、聞くと『まぁまぁだな』って 答えるの」 美弥がくすくすと笑う。 「なんか、美弥より直江さんの方が、おにいちゃんのことわかってるなんて、美弥、ちょっと 悔しいなぁ・・・」 妙な含みがないのはわかっているが、思わずドキリとした。 「こら、美弥っ!変なこというんじゃない」 たしなめるオレに、変なことじゃないも〜ん、と美弥はさらに唇と尖らせる。 妹には妙な含みはないのだろうが、先程、あやうく美弥に変なところを見られそうになった 手前、少し焦ってしまう。 兄妹のじゃれあいを、直江は優しい瞳で見つめている。 目線がバチリと合って、妙にどきどきした。 直江がいて・・・、美弥がいて・・・、一緒にご飯食べたりして。 ―――― なんか、今、すげー幸せかもしんない・・・。 明日も、明後日も、直江と一緒にいられる。 月曜日もこっちにいられるんだったら、オレ、学校休んだっていい。 直江は渋い顔するかもしれないけど、今まで我慢してたご褒美、もらったってバチはあたら ないだろ? だから・・・、 ―――― 一緒にいよう、直江。 今日は、高耶さんの家に泊めてもらうことになった。 隣の布団で、彼は気持ちよさそうに寝息を立てている。 ・・・誰よりも愛しい相手を隣に、これは拷問のようなものである。 先程、高耶さんの家のベランダが開く音がして、すぐにそれが美弥さんだとわかった。 しかし、瞳を閉じて自分を感じてくれている高耶さんが、とても愛しくて、この人の 身内の前だとしても、彼を奪ってしまいたくて、理性がすり切れそうだった。 ・・・よく堪えられたものだ、と思う。 自分の理性も、案外捨てたものではない。 実をいうと、今夜、彼をホテルのディナーに誘って、そのまま・・・という、不埒な展開を、 少しばかり期待していたりしたのだが、とても幸せそうな彼の表情をみていると、これは これでよかったと思う。 無防備な顔を思う様さらしながら寝入る高耶を見つめていると、とても優しい気持ちに なってくる。 ふいに愛しさがこみ上げてきて、健やかに眠る彼の唇に、羽が触れるような優しいキス を落とした。 ・・・とても会いたかった。 ふとした瞬間に、彼を思いだし、何度松本に車を走らせようと思ったかわからない。 ようやく仕事も片付いて、兄に無理をいって取った3連休。 たまらずに、車を走らせていた。 驚かせてみたいという悪戯心で、電話をしてみたが、彼の思う以上の反応に、今まで 我慢していたことが報われた気がした。 明日、明後日と、ずっと彼のそばにいられる・・・、そう思うだけで、幸せな気分になれる。 月曜日、学校を休ませてしまいたいくらいだ。 彼と過ごしていると、あっという間に時間が経ってしまうのだが、休みはまだ始まった ばかりである。 ―――― 明日はどこにいきましょうか?高耶さん。 会えなかった一ヶ月を、きっと、埋めてみせますよ・・・。 〜Fin〜 コメント:なな 突然、こんな作品を押し付けてしまってすいません<(。。)> 翔華さんの素敵な作品には足元にも及びませんが、お礼の作品、これで完結です★ それでは♪これからも、よろしくお願いします♪(*^。^*ゞ コメント:翔華 こんな素敵な小説をくださってありがとうですvvv ほんと、届いた時は顔がにまにまでした(笑) こちらこそ、今後もよろしくお願いします♪
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