Eternity(前編) 
『今すぐ、松本に来い』 突然、あの人から電話がかかってきた。 明日は、大きな取引があり、兄、照弘と徹夜覚悟で書類と格闘していたのだったが、 直江にとってはそれどころではなくなった。 電話での声はいつもどおりだったが、こんな時間に、こんなに強引なことをいって くるのは初めてのことだ。 もしかして、あの人の身に何かあったのだろうか? ――――― AM 2:00 謝罪の言葉もそこそこに、直江は家を飛び出した。 宇都宮と松本の距離が今まで以上に長く感じる。 直江は、アクセルをさらに踏み込んで、松本に向けてWINDOMを飛ばしたのだ った。 早朝、直江は松本に到着した。 ようやく、高耶のアパートの前に駐車すると、高耶は待っていたといわんばかりに 家から出てきた。 しかし、どこか複雑そうな面持ちである。 「意外と早かったな、直江」 「いきなり松本に来いだなんて、驚きましたよ。一体どうしたんですか?」 「・・・松本まで遠かっただろ?」 直江の質問をよそに、高耶はこんなことを聞いてくる。 複雑そうな顔をしているのは、そんな理由からなのだろうか? 「ええ、あなたの身に何が起こったのか、気が気じゃなかったですからね。早くあ なたに会いたくて、ずいぶんとやきもきしてしまいましたよ」 「・・・こんな時間に呼び出されて、疲れてないか?」 「あなたに会いに来たのに、疲れるわけがないでしょう?」 「・・・・・・おまえ、明日も仕事じゃないのか?」 「仕事よりも、あなたのほうが大事ですからね。大丈夫ですよ、兄には明日は休む と伝えてきましたから」 慈しむように微笑みながら、彼のしなやかな髪を梳いた。 さらさらした感触が、とても懐かしく感じる。 そうか、もう一ヶ月も会ってなかったんだ。と、直江は改めて愛しい人のやわらか な髪に触れた。 「・・・・・・・・・」 じ・・・っと、高耶が澄んだ黒い瞳が見つめてくる。 彼の瞳には魔力がある。 何も言わずに見つめてくるだけで、直江のすべてを捕らえてしまう。 ・・・直江は内心、穏やかではない。 「高耶さん・・・?」 何も言わずに見つめてくるだけの高耶を、そっと呼ぶと、 「・・・別になんでもない」 拗ねたように視線をそらした。 「なんでもなくて、私を呼んだのですか?」 「そうだよ。悪ぃかよ」 妙に頑なな態度である。 いきなり直江を呼び出した理由を言わない。 どうもしなくて、こんなに無茶をいう彼ではないのだ。 「いいから、今日は付き合えよ」 ・・・絶対に何かある。と、直江は思った。 こんな時の彼には、強引に中に入っていくしかない。 何があったかわからないが、とりあえず、先に高耶の願いをかなえてやろう。 「では、どこに行きましょうか?」 直江は助手席のドアを開いて、高耶をWINDOMへと招いた。 ザザ・・・ン・・・・・・。 静かな波の音。 空には満天の星。 優しい海風に吹かれながら、二人は今、湘南の海を歩いていた。 歩くたびに、自分を柔らかく受けとめてくれる白い砂。 高耶は後ろに手を組みながら、直江の数歩先を歩いていた。 海までドライブしようと彼が言った。 お洒落なイタリアンレストランでディナーが食べたいと言い、BARで飲もうと言う。 未成年に直江がそう簡単に承諾するわけもなかったのだが、今までになく強情に、飲み たいと言い張るため、直江はとうとう少し甘めのカクテルで譲歩することになった。 今、浜辺を歩いているのも、高耶のリクエストだ。 彼の背中を見つめながら、直江は思う。 今日の彼は、本当に彼らしくなかった。 こんな風に振舞う彼は初めてだ。 直江が口を開こうとした時、タイミングを計ったかのように、高耶がくるりと振りかえ った。 高耶のしなやかな黒髪が、海風に吹かれて踊る。 前髪の下には、夜の海のような静かで深い、漆黒の瞳・・・。 「・・・直江」 「なんですか?」 「キス、しようぜ」 直江が思わず目を見張った。 高耶らしくない、突然の誘い文句。 しかし、彼の唇が、誘うようにうっすらと開かれると、直江はあがらいようのない力で 魅入られた。 引き寄せられるかのように近づき、彼の顎に手をかけて少し仰のかせると、直江はその まま彼を奪おうとすると・・・。 「・・・やっぱヤダ」 あと数センチで触れ合うところで、高耶の手が直江を拒む。 「・・・・・・っ!? 高耶さん・・・?」 「気分がのんねぇから、ヤダ」 高耶の身勝手な気まぐれに、直江が思わずカッとなった。 「一体、なんだっていうんですか」 「・・・・・・っ!」 高耶がビクリと身をすくめる。 「あなたに夢中な男をからかうのは、そんなに楽しいですか?あなたの気まぐれで振り まわして・・・、いくら私でも怒りますよ」 「直江・・・。怒ったのか・・・・・・?」 恐る恐るというように、高耶が上目遣いで様子を伺ってくる。 その様子が、子供のようで直江は思わず苦笑する。 「・・・怒ってませんよ」 ――――― バシッ!! いきなり、高耶が直江の頬に平手打ちをした。 言葉を失い、目を見張る直江に、もう一度とばかりに手が振り下ろされる。 すんでのところで、その腕を捕らえると、高耶は『離せ』といわんばかりに暴れたの だった。                      〜Eternity(後編) へつづく〜 コメント:水姫 なな 翔華さん♪「WING〜翼〜」10000HIT、おめでとうございます!!! お祝いとして、直江を振りまわしちゃう、わがまま高耶さんを(強引に)プレゼントvv 楽しんでいただけたら、幸いです(//^O^//) (このお話は後編で完結♪) コメント返し:翔華 ななさん!!素敵な小説をありがとうです(> <) もう、ドキドキしながら読みました♪ 高耶さんが可愛すぎるわぁぁぁ!! 直江ずるすぎる・・・(笑)            客室に戻る
               
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